先輩から逃げる方法を探しています。


私達は水族館へと行った後、プラネタリウムの場所へと向かっていた。

次こそはと水族館に着く前から財布を握っていたのだが、チケット売り場に向かうことはなくそのまま入口へと向かい先輩の手からチケットを渡された。

混雑しているといけないからと事前に買っていたらしい。

先輩曰く『ご褒美』のお出掛けだったはずなのに、これじゃ私が至れり尽くせりな状態だ。

せめてプラネタリウムだけでも……。

そんなことを考えているとふとプラネタリウムの外見が思い浮かんだ。

そのプラネタリウムは今から行く場所ではなく、ここよりも地元に近い場所にあるプラネタリウムだ。

地元付近にも映画館も水族館もプラネタリウムもあるはず。

近いわけではないが、少なくとも今日来ている場所よりは圧倒的に近い場所にある。

それなのにどうしてわざわざ遠出をしたんだろう?


「どうしたの?翼ちゃん」

「え?あ、いえ。プラネタリウムは私がお金を払いますね」

「その必要はないよ」


「じゃ~ん」と取り出されたものはプラネタリウムの入場券2枚。

先輩は用意周到すぎだ。


「引き止め料ってバイト先の店長がくれたんだよねぇ」

「先輩、バイトしていたんですか」

「毎日暇だったし、お金は必要だし?」


どうやら先輩は授業に出ていない間はバイトをしていたようだ。


「というか引き止め料とは?」

「これからは行く時間ほとんどなくなるし、辞めようかなって思ったら短時間の勤務でもいいからいて欲しいってねぇ」

「なるほど。それで引き止め料ですか」

「そうそう。まぁ俺も今の店好きだし引き止め料なんてなくてもそう言ってくれるなら辞めないんだけど」


もしかして「これからは行く時間はほとんどなくなる」というのは授業に出るからなんじゃ…?

授業に出ていない時間にバイトをしていたのならその可能性は高い。

耀先輩も先生もどうして先輩が急に授業に出るようになったのかはわからない。

私も思い当たることがない。

それに授業に出るようになった理由よりも、無理をしていないか、が一番気になることだ。


「新学期始まってから授業に出てるって聞いたんですけど…」

「もしかしてしゅがーちゃんに?」

「はい」

「ほんとなんでも話すなぁ」


呆れたように溜息を吐く。

どうやら全部の授業に出ていることは本当らしい。


「急にどうして授業に出るようになったんですか?」

「んーなんでだろうねぇ?翼ちゃんや耀ちんのおかげかな」


おかげなんて言われても…身に覚えがない。


「翼ちゃん、着いたよ。入ろっか」

「あ、はい」


結局、納得できる理由はわからないままプラネタリウムに着き、話は終わってしまった。

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