先輩から逃げる方法を探しています。
プラネタリウムから出ると、空はすっかり茜色に染まっていた。
先輩とのお出掛けの時間ももう終わりだ。
プラネタリウムの感想を話しながら駅へと向かっていると、先輩は足を止めた。
「あ。カネコさんだ」
「金子さん?知り合いの方ですか?」
「はははっ。知り合いの方って…翼ちゃんもしかして知らない?ほら。あの人が持ってる大きなぬいぐるみ」
先輩の指をさした先には大きな猫のぬいぐるみが入った透明な袋を持っている人がいた。
猫…かねこ…か、ねこ……なるほど。あの猫のキャラクターの名前だったんだ。
最近ゆるキャラとして人気らしい。
どこかで見たことがあるような気もする。
「先輩も好きなんですか?」
「ううん。耀ちんの兄弟が好きなんだって」
「そうなんですね。あれ?あの方も持っていますね…あ。こっちも。何かイベントでもあっているんでしょうか?」
「イベントっていうかゲーセンの景品だと思うよ」
「ゲーセンってゲームセンターですよね?あんな大きなものがあるんですか?」
「うん。珍しくないけど、翼ちゃんゲーセン行ったことないのっていうかなさそうだよねぇ」
先輩の言う通り、私はゲーセンに行ったことがない。
どんなところなのかは少しは知っているけど、まさかあんな大きなぬいぐるみが景品としてあるのは驚きだ。
ぬいぐるみを持った人が歩いてきた先を見ると大きな建物が見えた。
そこからはまたぬいぐるみを持った人が出てきたり、入る人がいたりと出入りが頻繁だ。
あの建物がゲーセンなのだろう。
また足を進め出した先輩の袖を軽く引く。
「どうしたの?」
「良かったら行ってみたいです。ゲーセン」
「え?ゲーセン?興味出たの?」
まさか私がこんなことを言い出すとは思わなかったのか、驚いた顔を見せる。
興味が出たというわけではない。
ただの咄嗟に思いついた言い訳だ。
先輩とあと少しでも長く一緒に居られるように。
明日になれば学校もあるし、先輩には会えるはず。
それは分かっているのになぜだか寂しさを感じていた。
「んー…ゲーセンねぇ……」
あまり乗り気ではない様子の先輩。
そう…だよね。もう結構遅い時間だし、急に言われても困るよね。
「すみません。やっぱり帰りましょう。先輩の時間もありますし…」
「翼ちゃん………いや、行こう」
「でも先輩」
「はいはい行くったら行く~。レッツゴー」
「わっ!?先輩待ってください…!」
先輩に手を引かれ、ゲーセンへと向かった。