先輩から逃げる方法を探しています。
あと少しだけ、あと少しだけ。
そう繰り返したのは今で何度目だろうか。
ゲーセンを出て数十分。私はずっと先輩を探し続けていた。
急に喉が渇いたと言い出して急かしていたにも関わらず、近くの自販機は駄目で、コンビニまで行ってと言ったこと。
私と別れて数秒後には3人組と会って、ゲーセンを出たこと。
なにか不自然な気がする。
…なんて。
そんな理由は後付けで、本当は先輩が何も言わずに勝手にどこかへと行くなんて思いたくないからだ。
「おっ…ねぇねぇねぇ、そこの可愛い子。1人でこんなところにいるの?」
「暇だったら俺らと楽しいことして遊ぼうぜー」
「無視しないでよ。はいストーップ」
「えっ……」
急に立ちふさがれ、足を止める。
まさか私に声を掛けているなんて思いもしなかった。
「すみません。今急いでいるので」
「えーっちょっとぐらいいいじゃん?ね?」
後退り、振り向くとそこにはあと2人。
周りを見ても通行人はいない。
先輩の行きそうなところを予想して歩いている間に人通りの少ないところへと来てしまっていた。
ど、どうしよう……。
走って逃げようにも前にも後ろにもいるし…。
「えっと……あの…急いでるので…」
「急いでるって…あっ!もしかして君ってさーあいつと岸本 蓮(キシモト レン)と一緒にいた子じゃん?なぁ?」
あいつ?岸本蓮?
目の前にいる人の言葉に、後ろにいた2人は近寄ってきて私の顔を見ると頷く。
そして1人は人差し指を立てると何か閃いたのか「ああっ…」と声を漏らした。
「もしかして急いでるってのはあいつを探してんの?」
「まじかよー俺らボコボコにしちゃって悪い事したなーはははははっ!」
「あんな弱っちい彼氏やめといたほうがいいぜ。つーかそれなら尚更俺らと遊んだほうがいいって」
「ちょっ…と…!」
手首を掴まれ振りほどこうとしても、私の力じゃ敵わない。
さっきから会話の内容もよくわからないし、とにかくどうにかして逃げなきゃ…。
でもどうやって逃げればいい?
走って逃げるにも手首を掴まれてるし。力も敵わない。
…怖い……怖い…っ………先輩…!
「何やってんだよ。離せ」
「ぐあっ!?」
声と同時に私の手首を掴んでいた人は腕を押さえながら地面に倒れ込む。
私の腹部に手を回し、自分の方へと引き寄せると庇うように目の前に立った。