日だまりの雨
「……日咲ちゃん」
雨音の家の前で立ち尽くしていたわたしに声を掛けたのは、学校から戻った陽光くんだった。
雨音のことに触れられたくなくて、わたしは陽光くんを避けていた。
案の定、今わたしの正面に居る陽光くんの表情は堅く険しい。
「なんで、雨音に会いに来たの?」
思わず開き掛けた口がまた閉ざされる。
俯きかけた視線を呼び戻すように、
「どうぞ?」
陽光くんは素早く玄関のドアを開け、中に入るよう促した。
「雨音の部屋は二階だよ」
陽光くんの声に、わたしは二階へと駆け上がる。
静かな家に、わたしの足音が派手に響いた。
二階で唯一扉の閉まった部屋。
そこに雨音は居る。
ゆっくりとその部屋の前まで歩み寄った後、
「……雨音?」
遠慮がちなノックと共に、雨音の名前を呼び掛けた。