契約書は婚姻届
庭だけで自動車教習所以上の広さがあるから、屋敷の敷地を出ずに試乗ができる。

実際に運転してみると、大きさに慣れてしまえばGolfの方がいい気がした。

「じゃあ今度は、僕が運転してみるね」

朋香の車を買うのに、どうして尚一郎の試乗が必要なのか理解できないが、黙って助手席に座る。

試乗とはいえ、初めての尚一郎自身が運転する車。

その運転は同じ車とは思えないほど、自分が運転したときよりも滑らかな走りだった。


「それで。
どっちがいいかな」

リビングに行くと野々村がお茶を用意してくれていた。

尚一郎は紅茶よりコーヒーを好むから、コーヒーとケーキ。
料理長の大村が焼くドイツのケーキは絶品で、朋香の密かな楽しみだったりする。
そのせいか、この頃少し太ってきた気がして、ロッテとの散歩が欠かせない。
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