契約書は婚姻届
「あー」

鞄にキーをしまう際、雪也が目に留めた。
苦笑いで座り、店員を呼んでアイスティを注文する。

「尚一郎さんがもう準備してあるからって」

キーホルダーでさんざん揉めたあと、尚一郎から自分で選んだものを付けられた。

先日もらった財布とお揃いの、ピンクのハートのキーホルダー。

気に入らないはずがない。

尚一郎はなぜか、朋香の好みをよく理解していて、悔しいがいつも嫌だとは云えない。

「押部社長って結構独占欲強いんだ」

ふふっ、おかしそうに雪也が笑う。

……独占欲。

あれを独占欲というんだろうか。

「お昼、近くの店を予約してあるんだ。
朋香の好きなイタリアン。
……どう?」
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