契約書は婚姻届
「……ありがとう」

嬉しそうに笑う雪也に、朋香は頬が熱くなる思いがした。

 
雪也に連れられてきた店では、個室に通された。

ふたりで個室。

これではデートみたいで、浮気でもしている気分になる。
いや、男とふたりで会っている時点で立派な浮気なんだろうか。

「どうかした?」

「ううん」

浮かんでいた考えを慌てて打ち消す。
もともと、愛のない契約結婚。

尚一郎自身は朋香を愛しているようだが、朋香は別に尚一郎を愛しているわけではない。

……最近は少し、気になっているが。

とにかく、そういう関係なんだから、別にこれが咎められるはずがない……と、思う。
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