契約書は婚姻届
会計は朋香が払おうとしたが、雪也に断られた。

「少しくらいいいとこ見せさせろよ。
こう見えても外車ディーラーの営業なんだからな。
押部社長には遠く及ばないけど、それなりにもらってる」

「うん。
……じゃあ」

男のプライドってめんどくさい、内心、朋香は苦笑いしていた。


 
それからも雪也とは週一くらいの間隔で会っていた。

雪也と会うのは、まるで大学時代に戻ったかのように楽しい。
会うことに慣れていくと、はじめのうち抱いていた尚一郎に対する罪悪感が薄れていった。



「朋香、車が来てから、よく出掛けてるね。
そんなにこの家は窮屈だったかい?」

いつも通りの、尚一郎の膝の上、不安そうにレンズの向こうから碧い瞳が見つめている。
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