契約書は婚姻届
「あっ、……多少は」

確かに、はじめのうちは窮屈だった。
暇だし。

けれど、最近は朋香の意見を聞いていろいろ改善してくれ、以前ほどではない。

むしろ、尚一郎に飼われることを素直に認めてしまえば、快適と云えるくらい。

「ごめんね。
もっと早く、気づけばよかった。
義実家の方はどうだったかい?
行ったんだろう?」

「……父も弟も、元気、デシタ」

「それはよかった」

にっこりと笑った尚一郎にずきんと胸が痛んだ。

……嘘をついてしまった。

実家にはまだ、一度も帰ったことがない。
ほぼ毎回、雪也と会っている。

悪いことをしてるわけではないと思っていても、実家に帰らずに男とふたりで会っているなど、云いにくかった。
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