契約書は婚姻届
謝るのは尚一郎じゃない、……自分の方。

「お願いだから僕をひとりにしないで。
朋香が僕を好きになってくれなくたっていい。
でも、嫌いにならないで。
ひとりにしないで」

その寒そうな背中にそっとふれると、びくんと揺れた。
頬をつけて寄り添うと、とくんとくんと心臓の音が響く。
その音は心細そうで、心臓がぎゅうぎゅうと締め付けられる。

「ごめんなさい。
私は嘘をつきました。
尚一郎さんに内緒で、男の人と会ってました。
キスだってしました。
許して、なんて云えないけどっ……」

泣く資格なんてないのはわかってるのに、涙は勝手に流れていく。

こんなことならキスなんてしなければよかった。
尚一郎を傷つけるのが、こんなに苦しいなんて知らなかった。

でも、後悔しても遅い。
無かったことにしたくても、もうできない。

浮気されて傷ついてるのは尚一郎なのに、その顔を見ると自分が傷ついたみたいに胸がずきずきと痛む。
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