契約書は婚姻届
「はい」

男は無表情、というか仏頂面に近く、なんとなく話しかけづらい。

「その、あなたは……」

「ああ。
自己紹介が遅れておりました。
朋香様付きシークレットサービスの、花岡厳吾(けんご)と申します」

「えっと。
……よろしくお願いします」

朋香があたまを下げると、花岡も黙って小さくあたまを下げた。

そういえば尚一郎が、朋香にはシークレットサービスをつけていると云っていた。

いままで、雪也と会っていた一部始終をこの男が尚一郎に報告していたのかと思うと、腹立たしい。

けれど、知られて困ることをしていたのは自分だ。

 
朋香を屋敷まで送り届け、確かに野々村に引き渡すと、花岡は去っていった。
置いてきた朋香の車は、後で届けてくれるという。
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