契約書は婚姻届
なにもする気になれずに、自分の部屋に戻るとベッドの上で丸くなる。

雪也の状況がわかっていても、明夫の工場を選んだときのように、尚一郎と別れるとは云えなかった。

もう、自分のせいで尚一郎を傷つけたくない。

それが正直な気持ちだった。

「……私は人殺しだよね」

ぽつりと漏らした声は、自分の胸に重くのしかかり、息ができないほどに潰れてしまいそうだ。

「どうしたらよかったんだろう。
なにが、正解なんだろう。
わかんない、わかんないよ」

声は次第に鼻づまりになっていき、涙がぼろぼろこぼれ落ちていく。

……私は人殺しだ。
雪也が死ぬってわかってて、尚一郎さんを選んだ。

その罪の重さに、押し潰されてしまいそうだった。
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