契約書は婚姻届
尚一郎はうっとりと朋香の髪を撫でると、いつもよりも少しだけ長く、口付けしてくる。
しかし、朋香には尚一郎がなにを云っているのかまったく理解できないでいた。

「朋香を苦しめる奴は絶対に許さない。
あの男も、CEOも」

「尚一郎、さん?」

一瞬、尚一郎が冷たい顔をした気がした。
けれど、すぐににっこりと笑って朋香の顔を見る。

「朋香はなにも心配しなくていいよ。
全部僕が片づけてあげる。
だから、安心していまは眠って」

「……はい」

瞼に落ちた口付けに目を閉じると、今日は気持ちが処理しきれないことがあったせいが、すぐに眠気が襲ってきた。
ふれ続ける、尚一郎の唇が心地いい。

「……Dieses Mal, absolut schutzen」

決意するかのように呟かれた言葉は、よく聞き取れないうえに意味がわからなかった。
聞き返そうにも穏やかに眠りへと包まれていく。
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