契約書は婚姻届
「あの、井上って男のこと、気にしてるのかい?」

黙ってうなずくと、はぁっと小さく、尚一郎がため息を漏らした。

「あの男は朋香を酷く傷つけたからね。
取り立て屋に借金を踏み倒して逃げるつもりだって……」

「なんでそんなことするんですか!?」

「と、朋香!?
危ないよ!」

思わず腕を掴んだ朋香に、ハンドルが取られ車が大きく右に寄る。
慌てて尚一郎はハンドルを切り、車を元に戻した。

「なんで!
なんでそんなことするんですか!
これじゃ、ますます……」

……自分が雪也を死に追いやったみたいだ。

泣きたくないのに涙はぼろぼろ落ちてくる。

「嫌い!
尚一郎さんなんてだいっきらい!」
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