契約書は婚姻届
「はい!」

そこできびきびと働いていたのは――雪也、だった。

「……あれ」
 
「うん?
だから、牧場においしいソフトクリームを食べに行こうって云っただろ?」

意味深に、尚一郎がぱちんとウィンクした。

 
言葉通り、ソフトクリームを買って近くのベンチに座った。
ラフな服装にプライベート用の黒縁眼鏡だと、案外、尚一郎もこういうところが似合ってる気がする。

「あの男は朋香に感謝するべきだね」

「えっと……」

朋香自身、雪也の命を助けるようなことはなにもしてない。
首を傾げる朋香に、尚一郎は楽しそうに笑っている。

「朋香が気付かなかった、もうひとつのあの男を救う手段を実行したんだ」

「そういえば前も云ってましたけど、他にあるんですか」
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