契約書は婚姻届
ちゅっ、嬉しそうに口付けされると恥ずかしくなる。

自分は尚一郎が思っているほど、いい人間じゃない。
隠れてこそこそと男と会って、浮気して。
だからこそ、もう二度と、尚一郎を裏切るようなことはしたくない。

「そりゃさ、僕の大事な朋香をこんなに泣かせて、苦しめて、文字通り傷つけた奴なんて、死ぬよりつらい目に遭わせてやろうとは思ったけどね」

尚一郎は笑っているが、冗談に聞こえないから怖い。
それに、やろうと思ったらできそうな気がするからなおさら。

「でも、そんなことしたら、もっと朋香が苦しむからね。
だから、金輪際、朋香に近づかないことを条件に、借金は全部片づけてあげた」

ふふっ、楽しそうに尚一郎が笑う。

褒めて、褒めて。

見えない尻尾がパタパタ振られてる。

「……ありがとうございます」
 
少しだけ悩んで、そっと尚一郎の頬に口付けした。
途端に、尚一郎が満面の笑みになった。
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