契約書は婚姻届
困った子だね、とでもいうかのように尚一郎が笑って、ちょっとだけむっとした。

「そうじゃなくて。
……これからは尚一郎さんと一緒に寝たいです」

袖を引いて上目遣いで窺うと、右手で口元を覆った尚一郎がすぅーっと視線を逸らす。

「朋香がいいなら大歓迎だけど。
……Danke,MeinSchatz(ありがとう、マインシャッツ)」

ちゅっ、ふれた唇は、そのまま朋香の唇の感触を楽しむかのように二、三度ついばんで離れた。
目が合うと、眼鏡の奥の目が嬉しそうに笑っていた。

 
一緒にベッドに入ると、ぎゅーっと抱き枕のように抱きしめられた。
そのまま、ちゅっ、ちゅっと、つむじに、額に、瞼に口付けを落としてくる。

けれど、そればかりでそれ以上はない。
 
「あのー、尚一郎さん?
その、……しないんですか?」

処女じゃないんだし、恥ずかしがる必要はないとは思うが、尚一郎はその気じゃないのに、こんなことを聞くのは自分だけやりたいみたいで恥ずかしい。
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