契約書は婚姻届
「それに。
もし、朋香になにかあったら困るからね。
朋香を失ったら、僕はもう生きていけないよ」

「んっ、やめっ、……尚一郎さん!」

耳朶をおいしそうにはむはむと喰まれるとくすぐったい。
一緒に寝るようになってから、尚一郎はなにかと軽い悪戯をしてくる。

そういうのは……ちょっと困る。

大企業の社長の奥様はなにかと窮屈だ。

玉の輿だと冗談めかして尚一郎と結婚したが、家族関係は面倒だし。

朋香はそれでも最近、尚一郎と結婚してよかったと思い始めていた。


 
屋敷に戻るとロッテと別れて自分の部屋の浴室で軽く汗を流す。

そのあと、気が向いて読書なんかしてみる。
しかも、野々村から渡された、押部家の歴史、なんて本。
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