契約書は婚姻届
「その、……焼き肉、食べたいです」

「焼き肉かい?
わかった、大村に最高級の肉を用意させて……」

「そうじゃなくて!」

なんとなく、焼き肉じゃなくステーキが想像できた。
違う、違うのだ。

「お店で、食べたいです」

「じゃあ、崇之に最高級のお店を……」

「違うんです!」

尚一郎の思う焼き肉と、自分の思う焼き肉に違いがありすぎて軽く頭痛がしてくる。

確かに、高級店で食べる上品な焼き肉もいい。

でも、朋香が食べたいのはそうじゃないのだ。

「お店は私が決めていいですか」

「朋香お勧めのお店かい?」

ふふふっ、楽しそうに笑った尚一郎の顔が近づいてくる。
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