契約書は婚姻届
耳の傍に寄ったかと思ったら。

「それは楽しみだ」

囁かれたのと同時に耳の後ろに落ちた口付けに、顔が熱くなる思いがした。


 
次の土曜、焼き肉を食べに行くことになり、ついでに映画を観ようと昼食後に連れ出された。

ちなみに、今日は高橋の運転でアウディ。
焼き肉だったら飲むだろうし、そうなると尚一郎の運転でも朋香の運転でも困る。

 
シネコンに連れてこられたまではよかったが……まさかの貸し切りだった。
いちいち、貸し切りにしないと気が済まないのだろうか。

……はぁーっ、もう、ため息しか出ない。
 
「朋香、ポップコーンは食べるかい?
飲み物は?」

劇場内ど真ん中の席に座った尚一郎とまだ突っ立ている朋香の前には、メニューを手にした係員。
< 185 / 541 >

この作品をシェア

pagetop