契約書は婚姻届
さすがに貸し切りではなかったが、やはり個室。

仕方ないといえば仕方ない気もする。

尚一郎が少し歩き回るだけで視線が集まった。

金髪でイケメン、今日は黒縁眼鏡とラフな格好でセレブオーラは抑えめとはいえ、やはり目立つ。

目を引くのは仕方ないが、物珍しそうにじろじろ見られるとむっとした。

「朋香、なにか怒ってるのかい?」

「……だって、みんな尚一郎さんを見てるから」

「自分以外の人間が、僕を見ているのが嫌かい?
そんなに嫉妬してくれるなんて嬉しいな」

「そうじゃなくて!」

怒っている朋香になぜか嬉しそうに尚一郎は微笑んでいる。

「やっぱり朋香は素敵な女性だね」

なにがやっぱりなのかわからない。
でも、素敵だとか云われてうっとりと頬を撫でられると恥ずかしくなってくる。
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