契約書は婚姻届
「私は楽しかったですけど、……尚一郎さんはつまらなかったんじゃなかったのかなって」

「僕もあのシリーズは好きだからね。
もちろん、楽しんだよ。
それに」

「それに?」

朋香が首を傾げると、楽しそうに尚一郎がふふっと笑った。

「朋香が泣いたり笑ったりしている顔を間近でずっと見ていられたからね」

嬉しそうな尚一郎に、一気に恥ずかしくなった。


 
夜になるまで買い物をしようと、二、三軒お店を回った。

どこの店でも奥の個室に通され、お茶と茶菓子付き。

なにも云わなくても尚一郎の欲しいものがわかっているのか、商品が運ばれてくる。
場所が自宅か店かの違いだけで、いつもと同じお買い物スタイル。

云われるがままに試着して、尚一郎があーでもないこうでもないと云ってるうちにはまだいいが、気がつくと好みのデザインにセミオーダー、などと決まっていていまだに冷や汗をかく
< 189 / 541 >

この作品をシェア

pagetop