契約書は婚姻届
「朋香は欲しいもの、ないのかい?
僕はもっと、おねだりして欲しいんだけど」

「え、えーっと……」

すでに今日、服や靴、アクセサリーをいくつお買い上げしたのかわからない。

だいたい、自分の感覚で多少贅沢、くらいのものならまだ遠慮なく買えるが、給料何ヶ月分!? なんてものは、無理。
いくら贅沢していいって云われても、無理。

「朋香のそういうところがreizend(可愛い)なんだけどね」

人前なのにちゅっ、ちゅっと何度も口付けを落とされて焦ってしまう。
どうにか引き剥がすと、尻尾ふりふりわんこモードで見てて、苦笑いしかできない。

少し気持ちを落ち着けようと、淹れられていたアイスティを飲む。
グラスを置こうとして、視界の端に好みのサンダルが見えた。

「あの靴、いいですね」

「あれかい?」

あっという間に靴が目の前に置かれた。
< 190 / 541 >

この作品をシェア

pagetop