契約書は婚姻届
行くとさすがに土曜なので少し待ちができていた。

「予約はしなかったのかい?」

「予約はできないんですよ」

並んで空いてるベンチに座ると、尚一郎が手を重ね、指を絡めてくる。
前は速攻で振り払っていたが、いまは別になんとも思わない。
むしろ、それが自然だとすら思う。

少し待って店に入る。
店に入ると七輪の煙がもうもうと立ちこめていた。

尚一郎を連れてきたのは、七輪で肉を焼いて食べる店。
表こそ小綺麗だが、中は無造作な三和土に長年使い込まれたテーブルと椅子が並んでいる。

「凄いね」

席に着くと物珍しそうに尚一郎が周りを見渡す。

急に、強引にこんなところに連れてきてよかったのか、不安になった。

「あの、尚一郎さん。
その、もしかして嫌だったら、あの」
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