契約書は婚姻届
「ん?
嫌じゃないよ。
むしろ、こんな店に来てみたかったんだよね」

にっこりと笑った尚一郎にほっとした。

 
届いたビールで乾杯。

そういえば、ドイツはビールの国なのに、あまり尚一郎がビールを飲んでいるところは見たことがない。

「んー、なんとなく、かな。
あまり居酒屋とかこういう店には誘われないし」

いくつか朋香に確認しただけで、尚一郎は普通に肉を焼いて食べている。

やはり視線は気になるが、かまわないことにした。

肉を焼きながらビールをごくごくと飲んでいる尚一郎はわりと合っている。
いつものセレブな感じより、こっちの方が好きなくらい。

「だいたい、おかしいと思わないかい?
新入社員の歓迎会に僕だけ誘われなかったんだよ?
僕だって新入社員だったのに」
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