契約書は婚姻届
「社長就任もCEOの反対があってずいぶん揉めて。
あれがなかったら、もっと早く社長になれてたんだけど」

「はあ……」

確かに、あの祖父がすんなり尚一郎をグループ会社の一企業とはいえ、社長に就けるはずがない。
それなりに苦労はあったんだろうとは思うが。

「尚一郎さんってほんとに凄いんですね……」

「惚れたかい?」

「ぜん、ぜん!」

熱い顔を誤魔化すように、ジョッキに残ったビールを飲み干すとさらに熱くなった。

 
店を出ると連絡もしてないのに高橋の運転するアウディが近くで停まった。
どうなっているのかは気になるが、知らない方がいい気がするので、気にしないことにする。

「今日は楽しかったよ。
また、連れてきてくれるかい?
朋香お勧めのお店」
< 195 / 541 >

この作品をシェア

pagetop