契約書は婚姻届
「あー、そろそろくるとは思ってたんだよねー」

ははははっ、力なく笑うと、尚一郎はがっくりと肩を落とした。

「朋香は来なくていいよ。
僕ひとりで行くから」

いい子いい子とあたまを撫でられると悲しくなる。

本邸に行くということは、尚一郎が酷く傷つけられるということだ。

「私も行きますよ。
……なにもできないですけど」
 
尚一郎を傷つけられるのは嫌だ。
なにもできなくても傍にいれば、少しは痛みを負担できるかもしれない。

「朋香まで嫌な思いをする必要はないよ。
それにこれは、かなり自業自得というか……」

「尚一郎さん?」

ちらりと悪戯がバレた子供のような視線を向けると、誤魔化すようにあたまを撫でてくる。
少ししてはぁっと小さくため息を漏らすと、尚一郎が云いにくそうに口を開いた。
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