契約書は婚姻届
それにしても。

……足が痺れてきた。


 
その日、朋香がおやつのチーズケーキを堪能していると、珍しく野々村の慌てた声が聞こえてきた。

「尚一郎様はお留守ですので!」

「別にいいじゃない、他人じゃないんだし。
……誰?」

リビングに現れた女性に、間抜けにも口に突っ込んだフォークをくわえたまま、ぱちくりと瞬きしてしまう。

「……お客様?」

一瞬、見つめ合ったふたりだが、女性の方が我に返るのは早かった。
つかつかと朋香の傍にやってくると、ソファーの背に手を突いて、上から高圧的に見下ろしてくる。

「ねえ、野々村。
この女、誰?
尚一郎の浮気相手?」
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