契約書は婚姻届
言葉とは裏腹に、涙はぽろぽろ落ちていく。
声を殺してロッテに抱きついて泣いた。


「さて。
これからどうしようか、ロッテ」

「ワン!」

「あっ、くすぐったいって!」

涙を拭うかのようにロッテにぺろぺろと顔を舐められると、少しだけ元気が出た気がした。

 
ロッテをお供に一本道を屋敷の外へと向かって歩く。
監視カメラの場所も通ったので朋香が敷地外に出たのはわかっているはずなのに、やはり尚一郎は追ってこない。

一般道に出ると、朋香はロッテの前にしゃがみ込んだ。

「ロッテ。
ここまで着いてきてくれてありがとう。
一緒に来て欲しいけど、無理だから。
おうちに帰ってくれる?」

「ワフ?」
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