契約書は婚姻届
なに云ってんの、私はずっと朋香について行くわ、そんな顔でロッテに見られて、思わずぎゅっと抱きついていた。

「ロッテ、ほんとにありがとう。
ロッテだけは私の味方だね。
でも、私は大丈夫だから、おうちに帰って?」

そっと、屋敷の方へロッテを押すと、不安そうに振り返られた。

「大丈夫だから。
ありがとう」

「くーん」

二、三歩進むとまた、振り返って小さく鳴く。
笑顔を作って手を振ると、まだしぶしぶのようではあったが、ロッテは屋敷の方へと戻っていった。

……さて。

ロッテが見えなくなると、ばしんと一回、両手で頬を叩いて気合いを入れる。

……とりあえず、いま、自分にできることをしよう。

 
さらに歩いて大通りまで出る。
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