契約書は婚姻届
「……嫌です」

「とーもーかー」

はぁっ、あきれたように小さくため息を落とされると、ますます意固地になった。
悪いのは尚一郎で自分ではないはずだ。

「お客さん、降りるんですか、降りないんですか」

迷惑そうなタクシードライバーになにも返すことができなくて黙っていると、尚一郎は運転席に回って窓を開けさせた。

「運賃はいくらかい?
僕が払うから」
 
告げられた運賃プラスアルファを渡し、尚一郎が領収書を受け取ると、後部座席のドアが自動で開けられた。

「ほら。
朋香、降りておいで」

「……やだ」

はぁっ、再びため息を落とした尚一郎は後部座席に乗り込むと、無理矢理、朋香を引きずり降ろして肩の上に担いでしまう。
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