契約書は婚姻届
暴れる朋香を肩に担ぎ上げたまま、尚一郎はばつが悪そうに笑った。


 
……ここで騒いでいても近所迷惑だから、とりあえず中に入りなさい。

明夫にそう促されて家に入る。
茶の間でだらしない格好でテレビを観ていた洋太は、突然現れた朋香と尚一郎に慌てていた。

「メシは食ったのか」

「……」
 
ふて腐れて黙っている朋香に、明夫は苦笑いを浮かべた。

「寿司でも取るか」

「いえ、お義父さん、すぐにおいとましますので……!」

「腹が減ってるとまともな話もできないだろう?」

余裕たっぷりに笑う明夫に、尚一郎は浮かせた腰を元に戻した。
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