契約書は婚姻届
町中を急発進、急ブレーキを繰り返されるより、幾分かは安心できる。

「ねえ。
あなた、尚一郎と別れなさいよ」

「は?」

予想の範囲といえば予想の範囲だが、それでも思わず聞き返してしまう。

「どうせ、契約結婚なんでしょ?
父親の工場を守るため……だっけ。
離婚して尚一郎の援助がなくなっても困らないように、ちゃんとほかの会社、紹介してあげるし」

「は?」

侑岐がなにを云っているのか理解できない。

そりゃ、オシベとの契約がなくても、明夫の工場が倒産の危機に立たされないとなれば、この契約結婚に意味はなくなる。
 
けれど、侑岐になにかメリットがあるとは思えない。

「それに、尚一郎と結婚したって、幸せになれないって理解したでしょ」
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