契約書は婚姻届
「そんなことはないです!」

侑岐の云う通り、尚一郎の押部家での立場だと、困難は多いだろう。
それにすでに何度か、嫌な思いをさせられた。

それでも。

「尚一郎さんは私を愛してくれてます。
私だって、尚一郎さんを愛してます。
だからきっと、幸せになる。
そう、信じてるから」

口に出すと、急に恥ずかしくなってきた。

……きっと私は、すでに尚一郎さんを愛してる。
いままで、認めるのが怖かっただけで。

「そう。
でも尚一郎、あなたと別れて私と結婚するって、達之助おじいさまに誓ってたわよ」

侑岐の、赤い唇が勝ち誇ったように吊り上がる。
瞬間、頬にかっと熱が走った。

「そんなの嘘に決まってます!」

「嘘じゃないわ。
指環だってくれたし」
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