契約書は婚姻届
侑岐の云う通りかもしれない。
表面上、尚一郎と侑岐が結婚してしまえば、達之助も満足だろう。

確かに、いいアイディアだとは思う。

けれど。
……けれど。

嘘でも、侑岐の隣で夫の顔をして、笑っている尚一郎を想像すると、胸が苦しくなった。

「僕の妻は仮面だろうがなんだろうが、朋香ただひとりだ!
なにがあろうと朋香以外の女性を、妻に迎える気なんてない!」

ぎゅっと手を握られて見上げると、レンズ越しに目のあった尚一郎が頷いた。
握り返して俯いてしまう。
嬉しくて、顔がにやけてしまいそうだ。

「へー、万理奈(まりな)の件で懲りてないの?」

「それは……」

万理奈、その名前が出た途端にさっきまでの勢いはなくなり、尚一郎は俯き、黙ってしまった。
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