契約書は婚姻届
なのに。

「もしかして朋香は貧乏な僕は嫌いかい?」

不安そうな尚一郎にふるふると首を横に振ると、にっこりと眼鏡の奥の目が笑う。

「よかった」

嬉しそうな尚一郎に泣きたくなる。
そんなに、尚一郎から愛されるなんて知らなかった。

だからなおさら。

「ダメですよ、こんな。
私にはそんな価値ないから……」

とうとう朋香の目から涙がこぼれ落ち、尚一郎は困った顔でその腕の中に朋香を抱きしめた。

「僕にとって、朋香はそれだけ大事な存在なんだ。
朋香を守るためだったらなんだってするよ」

「尚一郎さん……」
 
泣いている朋香と、朋香を愛おしそうに抱きしめる尚一郎を侑岐は黙って見守っている。
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