契約書は婚姻届
「そういえば、きちんと紹介してなかったね。
侑岐は重広工業の一人娘で、僕が日本に来たときにはすでに、婚約者に決まってた。
それからの付き合いなんだ」

「酷いと思わない? 
娘が同性愛者だって認めなくて、無理矢理男と結婚させようとするなんて。
まあ、表向き尚一郎と結婚するって云っておけば両親はなにも云わないし、都合がよかったの」

パチンと侑岐にウィンクされると、頬が熱くなった。
きっと侑岐は、女性からだってモテモテに違いない。

「不思議と尚一郎だと、腕を組んで歩いても、キスだってしたって嫌悪感はなかったし。
それに、押部家とは古い付き合いだから、……達之助おじいさまの性格も知ってた。
だから、尚一郎からしても都合がよかった」

ふっ、目を伏せて暗い表情をした侑岐に心がざわつく。
尚一郎が黙って、まるで話すなとでもいうかのように小さく首を振った。

「この話はやめにしましょう? 
ねえ朋香、このアプリ、知ってる?」

急に話を変えてきた侑岐に違和感を覚えた。
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