契約書は婚姻届
「……尚一郎さん。
その、すみません、弟が」

……ちょっとは遠慮しなさいよ。

心の中で洋太に悪態をつきつつ、そっと尚一郎の袖を引いて見上げると、すぅーっと視線を逸らされた。

「別にいいよ。
僕は一人っ子だからね。
弟ができて嬉しいんだ。
……それから」

「それから?」

尚一郎の顔が寄ってくる。
朋香の耳元までくると、そっと囁かれた。
 
「そんな可愛い顔されたら、いますぐKuss(キス)したくなっちゃうんだけど」

ちゅっ、耳の先にふれて離れた尚一郎の唇に、一気に身体中を熱が駆け回った。

完全に俯いて黙ってしまった朋香に、尚一郎は楽しそうにくすくすと笑っている。

そんなふたりに明夫は目のやり場に困って花瓶の花を見つめ、洋太はやってられないとシャンパンをあおった。
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