契約書は婚姻届
笑ってタクシーで帰る明夫たちを見送り、帰途につく。

「でも、残念だったね。
本当は押部の家を出るから、お義父さんの工場で一緒に働きたいって云うつもりだったのに」

心底残念そうな尚一郎は、どこまでが冗談なのかわからない。

「……本当に残念だ」

淋しそうに呟く尚一郎の、手を握ってそっと肩に寄りかかった。

「大丈夫ですよ、きっと」

そう云ったものの、なにが大丈夫かなどわからない。
けれどいまは、ただそう云うことしかできなかった。


夕食がすむと、尚一郎より先にソファーに座って、朋香は膝をぽんぽんした。

「朋香?」

「膝枕。
してあげますよ」

言葉にすると滅茶苦茶恥ずかしくて、顔が熱くなっていく。
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