契約書は婚姻届
「よろしくお願いします」

杉谷という男は、尚恭と同じくらいの年頃に見えた。
ただ、痩せぎすでどことなく神経質そうで、朋香は苦手意識を抱いていた。

杉谷の話によると、朋香のここでの生活はやはり、使用人と同じだという。

「お昼までに庭の掃除を終わらせておいてください。
終わるまで、食事はありません」

「はい」

一応、笑顔で答えたものの顔がひきつる。
任されたのは中庭とはいえ、軽く学校の運動場ほどあった。
しかも、山ほどの落ち葉。

……これを昼までに?

朋香が本邸に着いたのは十時頃だった。
時計は確認してないが少なくともすでに、十一時に近いはず。

できないと泣きつくのを待っているだろうが、しゃくに障る。
箒を握ると朋香は、黙々と掃除を始めた。
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