契約書は婚姻届
達之助との対面のあと、やっと食事にありつけた。
ただし、冷やご飯と漬け物、冷めた味噌汁のみ。
嫌がらせにものほどがある。



その後も毎日、無理難題を押しつけられた。

大きな、テーブルの上いっぱいの、グラス磨き。
使っていない部屋の全室掃除、ただし一日で。
全部屋の窓拭き。

けれど、なにをさせても文句ひとついわず、きっちり片付ける朋香を、達之助たちは苦々しく見ていた。



「朋香さん。
奥様がお呼びです」

「えっ、……はい!」

突然、後ろから声をかけられてはしごから落ちそうになり、慌てて掴む。

今日は蔵の掃除を命じられていた。

暗くじめじめした、カビっぽい蔵の中は気が滅入りそうだったが、尚一郎が帰ってきたらなにをしようかと楽しいことを考えて凌いでいた。
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