契約書は婚姻届
「え?」

完全に困惑している朋香を残して、杉谷は無表情に出て行った。
トン、引き戸の閉まる堅い音が、完全に質問を拒絶しているかのようだ。

衣装盆の中を確認すると、ぺらぺらの薄い着物が入っている。

いや、着物といえるのだろうか。

白の木綿でできたそれは袖無しの、甚平の上着だけのような湯着だった。

「下着なしでこれって、完全に見える……」

尚一郎にすら見せたことのない身体を、薄い布一枚あるとはいえ、達之助に見せるのは嫌だった。

「早くせんか!」

「は、はい!」

まごまごと躊躇う朋香に達之助の怒号が飛ぶ。
やりたくない、が、従わなければ、尚一郎の立場が悪くなるだけ。

……なんだって耐えるって決めたんだもん。
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