契約書は婚姻届
「は?
まだだろう?
儂は身体を洗えと云ったはずだ」

達之助が振り返り、思わず着物の裾を思いっきり引っ張る。
ねっとりとした視線が、全身に絡みついてきて気持ち悪い。
にたにたと笑う達之助の股間はすでに、興奮しきっていた。

「ほら、ここも洗わんか」

「い、いや」

朋香の手を取り、強引に導こうとする達之助の手を払いのけると勢いで、先程流した泡で塗れた床で足が滑り、こけてしまった。

「ここもきれいにしろと云っているだろう?
ん?」

慌てて裾を引っ張り、見えているであろう足のあいだを隠す。
立ち上がろうとすると、目の前に達之助の股間があった。
鼻先に突きつけられた醜悪なそれに顔を背けると、ぐいっと後ろあたまを押さえつけてくる。

「ほれ、やらんか。
そういえば海外は、テロとかなにかと物騒だ。
あれが無事に帰ってくればいいがな」

卑怯だと思う。
尚一郎の無事を盾にとって、こんなことを強要するなんて。
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