契約書は婚姻届
「当主!」

聞こえてきた云い争いの声とともに、がらり! 勢いよくドアが開いた。

「なにを、やっているんですか」

低い低い尚恭の声に、一気に浴室内の温度が、氷点下まで下がった。

「身体を洗ってもらっていただけだが?」

きわめて冷静に答えているようで、達之助の手は怒りでぶるぶると震えている。

「そんなところまで洗ってもらわなければいけないなど、当主はもう介護が必要ですね」

「尚恭!」

顔をどす黒いほど真っ赤にし、激高している達之助にかまうことなく朋香の傍に膝をつくと、尚恭は着ていた上着を脱いで朋香をくるんだ。

「私の可愛い娘を虐めないでいただきたい。
あなたにとってはその辺の小娘でしかないんしょうが、私にとって朋香さんは尚一郎から預かっている、大事で可愛い娘なんですから」
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