契約書は婚姻届
そっと、尚恭に肩を抱かれて立ち上がった。
促されて浴室を出ようとしたとき。

「許さんぞ、なおたかぁっ!
……うっ!」

どーん、派手な音に振り返ると、どこからともなく桶が降ってきて、達之助のあたまにパコンと小気味いい音とともに被さった。

「申し訳ありません、少々足が滑ったようで」

くすくすと笑っている尚恭に、悪びれる様子はない。

つかみかかろうとした達之助の足下に尚恭が桶を滑らせ、まんまとその中に踏み出した足を突っ込んで転んだらしい。

「行きましょう、朋香さん」

「待て、尚恭!
ううっ……」

床に転がったまま、打ち付けた身体の痛みにうなる達之助を残し、再度、尚恭に促されて浴室を出る。

そのまま、かばうように肩を抱かれて屋敷の中を進んでいく。
裏口までくると、待機してあったBMWに乗せられた。
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