契約書は婚姻届
先ほどの男が、やはり音もなく戻ってきていたから。
手にした銀の盆の上に載る、大きめのフリーカップを朋香の目の前に置くと、また一礼して去っていった。

「どうぞ。
飲めばきっと、よく眠れます」

「ありがとうございます」

カップの中身はホットミルクだった。

微かに、いい香りがする。

カップを包み込むように手で持つと、じんわりと温もりが指先からしみこんでいく。

ふーふーと冷ましてカップをゆっくりと傾けると、中身は人肌程度で適温だった。

こくん、一口飲むと、口の中に僅かな甘みと、いい匂いが広がる。
どうも、蜂蜜とブランデー入りらしい。

「これ。
お返ししておきます」

「あっ……。
ありがとう、ございます」
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