契約書は婚姻届
ケーキスタンドの上の、色とりどりのプチケーキについ、顔がゆるんでしまう。
「やっぱりその話は気になるわよね……」
紅茶を一口飲んだ侑岐が、困ったように笑った。
野々村は結局、あとはやるからと侑岐に追い出されている。
「その、野々村さんにお子さんがいるんだったら、跡取りを尚一郎さんにって、こだわらなくていいんじゃないかって思うんですけど」
「それはそうなんだけど。
……野々村は彼女と子供、達之助おじいさまに殺されたから」
「え?」
侑岐の云っている意味がわからない。
いや、わかるからこそ理解したくない。
「野々村の彼女は本邸の使用人だったの。
でも、ある日、達之助おじいさまが」
「……」
かたかたとカップを持つ手が震える。
きっと昨晩、尚恭が助けてくれなければ、自分も同じ目に遭っていた。
「やっぱりその話は気になるわよね……」
紅茶を一口飲んだ侑岐が、困ったように笑った。
野々村は結局、あとはやるからと侑岐に追い出されている。
「その、野々村さんにお子さんがいるんだったら、跡取りを尚一郎さんにって、こだわらなくていいんじゃないかって思うんですけど」
「それはそうなんだけど。
……野々村は彼女と子供、達之助おじいさまに殺されたから」
「え?」
侑岐の云っている意味がわからない。
いや、わかるからこそ理解したくない。
「野々村の彼女は本邸の使用人だったの。
でも、ある日、達之助おじいさまが」
「……」
かたかたとカップを持つ手が震える。
きっと昨晩、尚恭が助けてくれなければ、自分も同じ目に遭っていた。