契約書は婚姻届
着くと、尚一郎はなぜかとても嬉しそうで不思議だった。

昔ながらの家で鴨居が低いため、背の高い尚一郎はあたまをぶつけそうだ。
さらに、どこか浮いていておかしくなる。

茶の間に案内し、お茶を入れる。
戻ってくるとそこに尚一郎の姿はなかった。

どこにいるのか聞こうと明夫の顔を見ると、そのあたま越しに尚一郎の背中が見える。
隣の部屋で、仏壇に向かって手を合わせていた。

「押部社長。
なに、しているんですか」

「ん?
お義母上にご挨拶だけど。
朋香をもらうんだからね。
心配しないでも必ず幸せにしますって、約束してたんだ」

隣に座ると、目を開けた尚一郎がにっこりと笑う。
「でも、これはあくまで契約結婚で、私は」

「うん?
僕は必ず、朋香を幸せにするよ。
神に誓って」
< 38 / 541 >

この作品をシェア

pagetop