契約書は婚姻届
いたずらっぽく尚恭にぱちんとウィンクされ、朋香はその場にへなへなと崩れそうになった。

 

空港に着くとリムジンが待っていた。
疲れてないかと聞かれたが、ただただ早く、尚一郎に会いたかった。

飛行機に乗っている十二時間はあっという間に感じたが、いよいよ尚一郎に会えるとなると、車の一時間が妙に長く感じる。


ようやく着いたオシベヨーロッパ本社で、応接室に通された。
待っているあいだもつい気を抜くと顔がゆるんでしまいそうで、必死で引き締める。

「この忙しいときにCOO自らおいでとは……え?
朋香?」

バン、感情にまかせて行儀悪くドアを開けた尚一郎だったが、尚恭の隣に座る朋香に気付くとぱしぱしと二、三度、目を瞬かせた。

「お久しぶりです、尚一郎さん」

「え?
なんで朋香がここに?」
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