契約書は婚姻届
朋香が笑いかけてもまだ信じられないのか、尚一郎は眼鏡を外して目をゴシゴシとこすっている。

「夢じゃないよね?」

つかつかと勢いよく寄ってきたかと思ったら、目の前で片膝をついて座った尚一郎がそっと、頬にふれてくる。

「本当に、朋香だ……」

尚一郎からぎゅーっと抱きしめられた。
さらには、後ろあたまに顔をうずめるとすんすんとにおいを嗅がれる。

「朋香のにおいがする……」

「しょ、尚一郎さん!
尚恭社長の前ですよ!」

慌てて尚一郎を引きはがそうとした朋香だが、離れてくれないどころか。

「なんであなたかここにいるんですか」

朋香に抱きついたまま、顔だけ離した尚一郎がジト目で尚恭を睨みつける。

「……連れてきたのは私なのだが」
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